酎割りのような酒精を含む飲料では、味の印象を左右する要素の一つとして「酸度」がある。酸度は、単に pH の数値を見るものではなく、試料中に含まれる酸がどれだけ水酸化ナトリウムで中和されるかを測定し、その結果を一定の基準で換算した値である。
ここでは、酎割り原液を 1 mL 採取し、0.1 mol/L 水酸化ナトリウムで滴定する場合を例に、酸度の計算方法を整理する。
測定条件
測定条件は次のように設定する。
- 試料:酎割り原液
- 採取量:1 mL
- 滴定液:0.1 mol/L 水酸化ナトリウム
- 水酸化ナトリウム消費量:3.5 mL
- 計算係数:0.6
- 空試験およびファクター補正は考慮しない
この条件では、酸度は次の式で計算される。
酸度 = 水酸化ナトリウム消費量(mL)× 0.6
したがって、水酸化ナトリウムを 3.5 mL 消費した場合は、
酸度 = 3.5 × 0.6 = 2.1
となる。
この酸度の単位
この場合の酸度 2.1 は、単なる無単位の数字ではない。意味としては、
2.1 g/100mL
であり、より正確には、
2.1 g/100mL(酢酸換算)
と表すことができる。
つまり、酎割り原液 100 mL 中に、酢酸として換算した酸が 2.1 g 含まれている、という意味になる。ただし、実際に含まれる酸がすべて酢酸であるという意味ではない。試料中の総滴定酸を、便宜上、酢酸の量として換算しているということである。
係数 0.6 の由来
0.1 mol/L 水酸化ナトリウム 1 mL に含まれる水酸化ナトリウムの物質量は、次のように計算できる。
0.1 mol/L × 0.001 L = 0.0001 mol
酢酸は一価の酸であり、水酸化ナトリウムとは 1 : 1 の関係で中和する。
CH₃COOH + NaOH → CH₃COONa + H₂O
そのため、0.0001 mol の水酸化ナトリウムは、0.0001 mol の酢酸に相当すると考えることができる。
酢酸のモル質量を約 60 g/mol とすると、
0.0001 mol × 60 g/mol = 0.006 g
となる。
つまり、0.1 mol/L 水酸化ナトリウム 1 mL は、酢酸換算で 0.006 g の酸に相当する。
今回の試料採取量は 1 mL であるため、1 mL の試料中に 0.006 g の酸がある場合、100 mL あたりに換算すると、
0.006 g × 100 = 0.6 g/100mL
となる。
このため、0.1 mol/L 水酸化ナトリウムを 1 mL 消費するごとに、酸度は 0.6 増える。これが係数 0.6 の意味である。
実際の計算例
水酸化ナトリウムの消費量が 3.5 mL の場合、まず酢酸換算の酸量を求めると、
3.5 mL × 0.006 g/mL = 0.021 g
となる。
これは、採取した 1 mL の酎割り原液中に、酢酸換算で 0.021 g の酸が含まれていることを意味する。
これを 100 mL あたりに換算すると、
0.021 g × 100 = 2.1 g/100mL
となる。
したがって、酸度は次のように表せる。
酸度 = 2.1 g/100mL(酢酸換算)
現場では簡略化して、
酸度 2.1
と表現されることがあるが、その意味は「酢酸換算で 2.1 g/100mL」ということである。
pH との違い
酸度と pH は混同されやすいが、意味は異なる。
pH は、試料がどの程度強く酸性を示すかを表す指標である。一方、酸度は、試料中に含まれる酸がどれだけ水酸化ナトリウムで中和されるかを表す指標である。
そのため、pH が低いからといって、必ずしも酸度が高いとは限らない。また、pH が近い試料同士でも、含まれている酸の総量が異なれば、酸度は異なる。
酎割りの酸度測定では、pH そのものではなく、水酸化ナトリウムの消費量から総滴定酸を求めることが重要である。
炭酸を含む試料での注意点
酎割りのような飲料には、炭酸が含まれている場合が多い。炭酸ガスが溶けたまま滴定すると、炭酸も水酸化ナトリウムを消費するため、酸度が高めに出る可能性がある。
そのため、炭酸を含む試料では、測定前に十分に脱気することが重要である。脱気後に滴定することで、果汁由来の酸や酸味料など、本来評価したい酸度に近い値を得やすくなる。
まとめ
酎割り原液を 1 mL 採取し、0.1 mol/L 水酸化ナトリウムで滴定する場合、酸度は次の式で計算できる。
酸度 = 水酸化ナトリウム消費量(mL)× 0.6
水酸化ナトリウムの消費量が 3.5 mL であれば、
3.5 × 0.6 = 2.1
となり、酸度は、
2.1 g/100mL(酢酸換算)
と表される。
この値は、酎割り原液 100 mL 中に含まれる総滴定酸を、酢酸量として換算したものである。酸度は pH とは異なり、酸の強さではなく、試料中に含まれる酸の総量を評価するための指標である。