ソース類の検査では、滴定で求めた酸度はほぼ同じなのに、pH の値が少し違うことがあります。
一見すると不思議に感じますが、酸度と pH はそもそも見ているものが違います。
滴定酸度は、試料中に含まれる「水酸化ナトリウムで中和される酸の量」を表す指標です。つまり、どちらかというと「酸の総量」に近い考え方です。
一方で pH は、その試料が今どのような酸塩基平衡の状態にあるかを表す値です。水素イオンの活量を反映しているため、酸度と完全に同じ意味ではありません。
そのため、酸度が同じでも、pH が必ず同じになるとは限りません。
1. 量産品におけるロット差
通常の量産では、同じ配合、同じ製造工程であっても、ロットごとにまったく同じ状態になるとは限りません。
原料のロット、酢、しょうゆ、発酵調味料、エキス類、加熱や濃縮の状態、冷却状態、採取する場所、試料の温度など、さまざまな要素によって、最終的な pH が少し変わることがあります。
滴定酸度が同じで pH が少し違う場合、総酸量としては近いものの、試料そのものの酸塩基平衡の状態が完全には一致していない、と考えることができます。
この場合は、1回の数値だけで判断するのではなく、その製品の普段の pH の範囲と比較して見ることが大切です。
小さな変動であれば、通常のロット差として考えられる場合があります。
一方で、普段の範囲から大きく外れている場合は、再測定や原因確認が必要になります。
2. 試作品における再現性
もう一つよくあるのが、実験室で作る小スケールの試作品です。
例えば、毎回 1 L だけソースを作る場合、同じ配合で作り直しても、pH が少し変わることがあります。
この場合、必ずしも製品そのものに異常があるというより、小スケールでの製造再現性の問題として考えるほうが自然です。
1 L の試作品では、一つ一つの原料の使用量が少ないため、秤量誤差、移し替え時の残り、撹拌時間、投入順序、冷却状態、測定時の温度などの影響が大きく出やすくなります。
また、定容の際に容器の目盛りを大まかに見ている場合、実際の液量にわずかな差が出ることもあります。見た目には同じ 1 L でも、実際には少し多かったり少なかったりする可能性があります。
その結果、濃度や酸塩基平衡がわずかに変わり、pH の差として現れることがあります。
そのため、同じ配合の試作品を作り直したときに pH が少し変わることは、現場では十分に起こり得る現象です。
3. 現実的な見方
酸度が同じなのに pH が違う場合は、まず場面を分けて考えると整理しやすくなります。
量産品の場合は、ロット差、原料の状態、製造条件、採取条件などを確認します。
試作品の場合は、秤量、定容、撹拌、温度、測定方法の再現性を確認します。
試作品の pH をより安定させたい場合は、作り方をできるだけ固定することが重要です。原料はできるだけ正確に量り、定容方法、投入順序、撹拌時間、冷却条件、測定温度などをそろえることで、pH のばらつきを小さくしやすくなります。
簡単に言えば、酸度は「酸の総量」に近い指標であり、pH は「その時点での酸塩基平衡」を示す指標です。
両者は関係していますが、同じものではありません。
そのため、酸度が同じでも、pH が完全に同じになるとは限りません。